正解のない時代の経営課題に向き合う

先が読めないVUCAの時代、新型コロナウイルスの感染拡大によって、20年かかるはずだった変革が2~3年で起こったと言われています。もともと200年に一度の大変革の時代を迎えて、もう後戻りはできません。これからの新しい社会に向けて、企業経営にも大胆な変革が必要です。

そのような中で、大変革時代の経営コンサルタントに期待される役割について考えていきたいと思います。

経営コンサルタントの役割とは?

経営コンサルタントの役割とは何でしょうか?

よく聞かれる問いではありますが、これまでに諸先輩方が出してきた答えが、現在までの経営コンサルタントの姿を形作ってきました。

その答えの一つは、経営者の視点で考えられる対等な関係のパートナーであるということです。別の言葉で言い換えると、経営者の壁打ち相手ということになります。企業において、経営者は最高の意思決定者ですから、対等な立場に立てる壁打ち相手を社内に求めることはできません。従って、外部の第三者である経営コンサルタントが、対等な壁打ち相手の役割を果たすことになります。

では、経営コンサルタントに期待される価値は何でしょうか?

特に中小企業の場合について考えてみます。中小企業の経営者は、経営の経験・実績は豊富に有しています。しかしながら、これらは経営現場での実践から身に着けたものであり、経営学や経済学の学術的な背景・理論に裏付けられてはいないのが実状です。そこで、経営コンサルタントには、これら不足している知識や情報を経営者に提供することが価値になっていました。つまり、経営者への指南役、アドバイザーとしての役割です。

様々な経営の原則や理論を習得し、ロジックとフレームワークを駆使して経営課題を解決して、企業をより良い方向に導き業績を向上させるのが、経営コンサルタントのイメージでした。そのために経営コンサルタントは、最新の学術的な知見や理論、先進企業の事例、大企業が持つノウハウを学び続け、知識を増やして知見を高める必要がありました。

これからの企業経営に求められること

これからの経営コンサルタントについて考える前に、経営コンサルタントの顧客である企業の側には、どんな変化が起こっているかを見ていきます。

AI/IoT/VR・AR/5Gなどテクノロジーの進化、少子高齢化する社会、顧客ニーズの多様化、成熟する市場、グローバル化、モノが売れない時代、デジタル化とオンライン化、など、企業の経営環境は著しく変わり、変化のスピードも加速しています。一方では、SDGs、カーボンニュートラル、デジタル変革(DX)、働き方改革といった社会変革を象徴するキーワードがいくつも登場しています。いま、企業の経営には、これらの要求事項のすべてに対応することが求められています。

重要なことは、これまでの考え方では同時には成立し得ない矛盾が存在していることです。例えば、カーボンニュートラル・CO2排出量ネットゼロを考えてみましょう。企業が何らかの事業活動をすれば、いくらかのCO2を胚珠することは否めません。これをゼロにしろと言われたら、企業は活動を止めるしかありません。働き方改革の議論も同様で、企業に所属することが働くことという前提を破壊しつつあります。

つまり、企業が直面している経営課題は、単なる売上拡大や業績向上ではなく、ゼロベースで考え直さないと解決できないものに変わってきています。このように従来の常識や前提、ロジックでは解けない複雑な課題は「適応課題」と呼ばれます。これからの企業の経営課題は、適応課題になっているのです。

経営者のパートナーとしての経営コンサルタント

新しい時代の経営コンサルタント像とは?

ここまで述べてきたように、企業が抱える経営課題は適応課題に変わりました。従って、経営課題解決のプロフェッショナルである経営コンサルタントには、この適応課題に答えを出すことが求められます。これこそが、新しい時代の経営コンサルタントに期待される役割と言えるでしょう。

適応課題は、正解のない問題ですから、解き方にセオリーはありません。また、前例のない新しい課題でもあるので、過去の経験や外部の事例に頼っても答えは見つかりません。

適応課題を解くためには、自分自身が変わることが必要だと言われています。自分自身とは、企業自身であり、経営コンサルタント自身でもあります。言い換えると、過去の常識や前提知識から離れて、自分がこれだ、と信じられたことが唯一の答えになります。もちろん、正解がない世界ですから、いったん出した答えでも常に見直してフィードバックしながらアップデートしていくことが必要です。

これからの時代には、経営者と一緒に適応課題に向き合うことが、経営コンサルタントに期待されています。企業としても経営者がゼロベースでビジョン・ミッションを見直すことで、将来の姿が見出せるかもしれません。その際に、経営者に真摯に寄り添い、想いを引き出し、ありたい姿を一緒に描く、コーチやメンターとしての役割が経営コンサルタントにとってますます重要になってくるでしょう。

そのためには、経営コンサルタント自身としても、これまでのように知識や情報、知見を習得することに加えて、適応課題に向き合うために、思考の姿勢、マインドセットを磨いていきたいと考えています。

 

株式会社ディアレスト・パートナーは、経営者の想いを大切に、ゼロベースで考え、本質的な問題の発見を重視したコンサルティングを提供します。